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2012/03/19

[エッセイ]Monster from WEST

町並み
前回の記事でセネガルについて少し触れた。セネガルの発展、統治の度合いはアフリカ大陸でも比較的高い。道路の奇麗さ、建物の大きさや奇麗さ、マーケットが整理されている点など、多くの点が上げられる。比較として一度訪れたガーナをあげたい。アフリカの扉の一つであるガーナの方がセネガルよりもGDPは高い。しかし、インフラや街並みの綺麗さはセネガルがこれから伸びるだろうと思わせた。今回は、セネガルの土台にある西欧化というモンスターについて触れたい。


前の記事でも書いたが、バスに番号がついている。道路整備が美しい。ファーストフード店が多い。更に、24hのコンビニも見た。人々の服装はイスラム系の服を持っている人は多いが、寒さも起因して比較的暖かい格好をしている人が多い。そのファッションは明らかにフランスから降りて来ている。テレビではパリコレクションならぬ、ダカールコレクションのようなものを放送していた。芸術村に訪れた写真をアップしたが、結局はそれもフランス的な価値観が入り込んできているからであることは明確だ。



隠れているわけではないが Monster form WEST がどれだけ大きいかを示したのは携帯会社だ。現在セネガルでは二つの会社が携帯ネットワークマーケットのシェアを持っている。しかし、一つは広告下手なのか、資本がないのかはわからないが消えていくのがわかる。ちなみに、その携帯会社はシエラレオネで他の携帯会社に買収されている。モンスターの角はセネガルのもう片方の携帯会社Oだ。このO社は2012年に行われたANC(African Nations Cup)の大きなスポンサーだった。ANCはアフリカで行われる国対抗のサッカーの大会だ。O社の名前はスタジアムのど真ん中の宣伝枠に入っていた。そして大会が終わり(優勝はザンビア)表彰式となると、各会社がMVPなどを表彰する。O社の代表もトロフィーを選手に渡していたが、完全にヨーロッパ人だった。O社は英語圏では見なかったが、ギニア、セネガルで見た。よって、フランスの会社だろうと推測できる。


セネガルでは巨大なフランスが動いている。そのおかげで、セネガルでは欲しいものが手に入る。住める家も劣悪ではない。ただ、少しばかり西欧的な、先進国的なシステムがある。例えば、家に蛇口がついていたり、水洗トイレなので水道代を払わなければならない。(シエラレオネ、ガーナの一般的な家にはない)少々物価が高い。少々家賃も高い。セネガルに挟まれているガンビアという国が在る。そこからは多くのガンビア人がセネガルへと出稼ぎにくる。ガンビア人の友人はこのセネガルのシステムに対して不満を漏らしていた。「セネガルは高い」と


新植民地主義 Neocolonialism
ここまでの話はそれほど驚きもしない。金がないアフリカのある国にフランスが介入しているのだ。そして、そこに住む人々はそれに気づかない。支配されていることに気づかないし、生活の質 (経済的な面で)が向上している。先進国への憧れはそう簡単には消えない。一般の地方に住む人が東京に対する憧れを消せないのと同じだ。(もちろん両者当てはまらない人はいる)そのシステムに生まれたものではなく、そのシステムに入ってきた人々(ガンビア人やナイジェリア人)はその先進国的なシステムに不満を漏らす。先進国への強い憧れは幻想だというのはわかる。 先進国 = お金なのだ。その方程式の中に、家賃、食費、学費、税金、といったものはついてこない。それはそうだ。知らないのだから。


さて、ここで驚く話をしたい。 アフリカの雑誌でそのことについて読んだあとにスイス人に確かめてみたら、その可能性は十分にあるという話だ。それは フランス人は未だに以前の植民地を自分たちの土地だと思っている ということだ。あえてここは単一化させてもらった。年配の人々がそれを頭では理解しつつも、無意識なレベルで支配感を持っている可能性があることは想像できる。一昨年、コートジボワールでは大統領が二人になってしまったことを背景に短期間の内戦状態に入った。しかし、ここでフランスが(コートジボワールは元フランスの植民地)介入したことで、批判を受けたのだ。


セネガルでは内戦という言葉は随分遠い。だからフランスの軍事的介入と言ってものはない。しかし、経済へのフランスの介入は激しい。町並み にあげたそれらは全てフランスから入ってきたもので、経済的にも文化的にもフランス製の靴の後が無数にあるのだ。それはもう数えきれない。もちろん、これだけフランスの足跡がついているのだからセネガルはフランスとの友好関係を強く保っている。フランスの足跡は一概に悪いものではないし、人々の生活の質を上げているのかもしれない。ただ、あまりのその巨大さにセネガルで怖気付いてしまった。


アフリカらしさ
ナイジェリア人はアフリカ各国に散布されている。理由はわからないがセネガルに滞在した最初の4日間は毎日違うナイジェリア人に会っていた。その中の一人でJICAで働いていた人がいた。このMonster from WESTの話をした。すると彼はこう言った。

「セネガルは中央から下のアフリカ各国と違い、西の影響が強いのは確かだよ。セネガルはWEST寄りなんだ。南アフリカは経済的な発展がめまぐるしいけれど、あれはまた別物。ガーナやナイジェリア、ケニアの経済発展は黒いね。WESTの介入がセネガルと比べて激しくない。ただセネガルは違う。WESTなんだ。」

アフリカに興味ない人は北アフリカとその他のアフリカが少々異なることを知らないだろう。簡単にいえば北アフリカはアラブ色が強く、黒人も多くはない。セネガルの北にはモーリタニアがあり、イスラム統治国家だ。セネガルの下には以前のブログに書いたギニアがある。セネガルはブラックアフリカと北アフリカの間に位置しながら、フランスとの友好関係を保っている。だから、インフラ整備がブラックアフリカの中で斗出しているのだろう。


ここまで来ると、どれがセネガルらしさなのかわからない。特に強く感じたのは芸術村に行った時だ。そこには数十人のアーティストが住んだりアトリエにして生活している。しかし、そのアートをはじめる概念だったりベースはフランスから来ている。もちろん、作品は素晴らしかったしアフリカ的だなと感じた。そう考えてみると、何がアフリカらしさで、その国らしさなのだろうか。シエラレオネにいるときに「米が主食だ」とよく言われていた。しかし彼らの元々の主食は米ではないはずだし、そもそも彼らが食べている米の大半は輸入品だ。


カランコロンと音がなる新宿
読者の一部はお気づきかもしれないが、日本も同じようなものである。なぜ、欧米に対して憧れを持ってしまうのだろうか。少なくとも筆者は持っていた。しかし、帰国する前に気づいたことは、東京クオリティは世界一であるということだ。そしてトイレクオリティも世界一だ。しかしその根っこは西欧に帰属している。この記事を終わらすために 西欧化 ならぬ 東亜化 という言葉を考えたりもした。しかし、しっくり来なかった。


僕はアフリカにいる際、下駄を履いたり和服を着たりして歩いていた。もちろん、洋服も持っていた。そこで驚いたことはモーリタニアの人々の服装だ。他のイスラム教国を知らないので一面的な驚きではあったのだが、彼らは彼ら独自の服を着ていたのだ。(イメージ的には陰陽師)和服や下駄だけを身につけることは筆者もしない。しかし、和服や下駄を見につけて東京にカランコロンと音を立てる人が増えても良いのではないかと思っている。




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あとがき
この記事と昨日、 @yuuu_aoki と話したことが少し繋がったので、書いておきたいと思います。今まで、僕はイノベーションという言葉が好きではなかったんです。イノベーションが嫌いというわけではなく、自分はそういうことには関係がないと思っていました。何故なら、twitterにも書いていますがいずれは村を作りたいからです。村づくりとイノベーションは真逆にあるものと考えていました。しかし昨日、青木くんと話していて、システムを作りなおすこと、新たなインフラを創り上げることはイノベーションなのだと気づきました。遅いです。ごめんなさい。恥ずかしいです。


ここで、この記事に繋がりますが、今、西欧化が進んでいる中で日本らしいものを再び掘り起こすシステムやインフラを作ることも、イノベーションと呼べるはずです。ならば、僕はそういうシステムに力を注ぎながら村をつくろうと思います。オーガニックイノベーション とか名付けたらかっこいいですね。でも、何でもオーガニック付けるの好きじゃないんです。はい。